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コラム

「あれ?何しようとしたっけ…」その物忘れ、MCI(軽度認知障害)かもしれません

「最近、人の名前がパッと出てこない」
「さっきまで何をしようとしていたか忘れてしまった」

このような物忘れ、年齢のせいだと諦めていませんか?

最近、当院が位置する豊中市やその周辺の大阪市、箕面市、吹田市や池田市の方々から「物忘れが増えた」「認知症が心配」「家族に受診を勧められた」といったご相談が増えています。年齢とともに多少の物忘れは起こり得ますが、中にはMCI(軽度認知障害)のように早めの評価が安心につながる状態も含まれます。

この記事では、MCIと認知症の違い受診の目安(物忘れ外来の相談目安)、そして世界的に注目される認知症予防研究(FINGER研究 / J-MINT)の考え方を、脳神経外科の視点からわかりやすく解説します。


MCI(軽度認知障害)とは?―「日常生活は保たれる」段階

MCI(Mild Cognitive Impairment)は、
同年代と比べて記憶や考える力の低下がみられる一方で、日常生活の多くは自立して行える状態と説明されています。

 

1. MCIの特徴(目安)

  • 自覚・周囲の気づきがある:本人や家族が「以前より記憶力や注意力が落ちた」と感じる

  • 日常生活は概ね自立:身の回りのことや普段の活動は保たれる

一方で認知症は、記憶や思考の障害により、生活のどこかに支障が出て支援が必要になる状態を指します。

 

ここがポイント      

MCIは「必ず認知症に進む」というわけではありません。
NIA(米国国立老化研究所)は、MCIの症状が同じままのこともあれば、改善することもあると説明しています。
ただし、同じくNIAは65歳以上のMCIの人で1年あたり10〜20%が認知症を発症すると推定しており、経過観察と原因評価が重要です。

 


2. 受診の目安:こんな物忘れが続くときはご相談を(物忘れ外来)

「まだ病院に行くほどではない」と思っていても、以下の症状が数か月以上続く、またはご本人よりご家族が強く心配している場合は、一度専門的な評価をご検討ください。

  • 同じ話を短時間に何度も繰り返す

  • 置き忘れ・紛失が増え、探し物の頻度が明らかに増えた

  • 日付や予定の把握が苦手になった

  • 段取りに時間がかかり、ミスが増えた

  • 家計管理や服薬管理に不安が出てきた(軽いミスでも)

  • 物忘れに加え、歩行のふらつき/手足のしびれ/言葉の出にくさを感じる

※注意:急にろれつが回らない、片側の手足に力が入らない、激しい頭痛などは脳卒中が疑われますので早急に受診ください。

 


3. 脳神経外科(脳神経内科)で行う評価の例

医療機関では、物忘れの原因が「加齢の範囲」なのか「MCI」なのか、あるいは治療可能な別の原因(慢性硬膜下血腫、うつ、睡眠障害、薬剤影響、内科的要因など)がないかを整理します。NIAも、治療可能な原因が背景にある場合があるため評価が有用としています。

一般的な評価の例:

  • 問診:生活状況、服薬、睡眠、気分変化、ご家族からの情報

  • 認知機能検査:簡易検査〜必要に応じて詳細検査

  • 血液検査:内科的要因の確認

  • 画像検査(MRI/CTなど):脳血管病変などの確認(必要に応じて)

【当院での取り組み】
当院では、当日にMRI検査を行いその場で説明、患者さんの受診前にご家族だけで受診頂き診察時の注意事項(本人には認知症と言わないでほしいなど)を確認するなど、安心して相談できる体制を整えています。

 


4. 世界が注目する「FINGER研究」―“多面的に整える”という考え方

認知症予防では、「これだけやればOK」という単独策より、食事・運動・認知トレーニング・血管リスク管理などを組み合わせる多因子介入が注目されています。

フィンランドのFINGER研究(ランダム化比較試験)は、リスクのある高齢者を対象に2年間の多因子介入を行い、認知機能の改善/維持が示唆されたと報告しています。

介入の柱(研究で扱われた要素)     

  • 食事(栄養バランスの最適化)

  • 運動(有酸素+筋力)

  • 認知トレーニング

  • 血管リスク管理(血圧・血糖・脂質など)

【大事な注意点】
FINGER研究は有望ですが、対象や環境が決まった研究であり、すべての人に同じ効果を保証する「確定治療」ではありません。

 


5. 日本における取り組み:J-MINT研究(国内エビデンスの整理)

日本でも多因子介入の検証として、J-MINTが計画・実施されています。プロトコル(研究計画)として、18か月の多施設ランダム化比較試験が報告されています。

また、J-MINTのランダム化比較試験として報告された2024年の論文では、主要評価項目(認知の複合スコア)で有意差は示されなかった一方で、二次アウトカムや遵守度の高い層での所見が報告されています。
→ つまり国内では、「誰にどの介入が効くか」を含めて、引き続き検討が進んでいる段階と言えます。

 


6. 当院でできること

 

当院では現時点で、FINGER研究のプログラムをそのまま「治療メニュー」として提供しているわけではありません。
しかし、

  • 物忘れの原因の正確な評価(MCI/認知症/治療可能な原因の整理)

  • 血圧・脂質・血糖など、血管リスクの見直し

  • 睡眠・運動・食事など、実行可能な生活習慣の助言

といった形で、将来の脳の健康につながるサポートを行っています。

 


7. まとめ:物忘れは“脳からのサイン”かもしれません

「年のせい」で片づけてしまう前に、今の脳の状態を正しく知ることが第一歩です。
MCIは日常生活が保たれやすい一方で、将来のリスク評価や経過観察が重要な状態でもあります。

「最近気になる」「家族の様子が以前と違う」など、少しでも不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 


よくある質問(FAQ)

Q1. 物忘れは何歳から受診すべきですか?
A. 特定の年齢ではなく、「以前より明らかに増えた」「生活で困りごとが出た」「家族が心配している」などの変化が目安です。

Q2. MCIと診断されたら、必ず認知症になりますか?
A. 必ずではありません。症状が同じままのこともあれば、改善することもあると説明されています。ただし、進行リスクが上がる集団でもあるため、評価と経過観察が大切です。

Q3. 認知症予防で“確実”な方法はありますか?
A. 現時点で「全員に確実」と言い切れる単独策はありません。一方で、多因子介入(食事・運動・認知トレーニング・血管リスク管理)の有効性は研究で検証が進められています。

 

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午前診 08:40 ~ 12:00
午後診 14:40 ~ 18:00
※水曜・土曜午後、日曜・祝日は休診

 


参考  

  • A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people (FINGER): a randomised controlled trial. PMID: 25771249

  • The Japan-Multimodal Intervention Trial for Prevention of Dementia (J-MINT): The Study Protocol for an 18-Month, Multicenter, Randomized, Controlled Trial. PMID: 34585222

  • Japan-Multimodal Intervention Trial for the Prevention of Dementia: A randomized controlled trial. PMID: 38646854