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コラム

【脳神経外科監修】冬の入浴に潜む「ヒートショック」と脳卒中|命を守る4つの予防策

寒さが本格化する12月から2月にかけて、脳神経外科医として特に注意を呼びかけたいのが、冬季の入浴中に起こる急激な体調変化です。

「お風呂に入っていて急に意識を失った」
「入浴後に激しい頭痛が出て動けなくなった」

このようなケースは決して珍しいものではありません。特に高血圧・糖尿病・脂質異常症などの基礎疾患をお持ちの方やご高齢の方では、冬の脱衣所と浴室の急激な温度差が、心臓や脳血管に大きな負担をかけることがあります。

本記事では、脳神経外科専門医の立場から、以下の3点を分かりやすく解説します。

  • 冬の入浴で体内に何が起きているのか
  • なぜ脳卒中や意識障害のリスクが高まるのか
  • 医学的根拠に基づく具体的な予防策

 

冬の入浴中の事故は「交通事故死」を上回る規模

日本では、高齢者の浴槽内での溺死・溺水事故が冬季に多発することが知られています。 消費者庁の注意喚起によると、人口動態統計に基づく「浴槽内での溺死および溺水」は、高齢者において冬季に集中して発生しており、年によっては交通事故による死亡者数を上回る規模となっています。

重要なのは、これらが単なる「不注意による溺水」ではない点です。

溺水の背景にある「急激な体調変化」

消費者庁は、浴槽内事故の背景として以下の要因が関与する可能性を指摘しています。

  • 急激な温度変化
  • それに伴う血圧の大きな変動
  • 意識障害や失神

つまり、「入浴中に意識を失い、その結果として溺水に至る」という経過が少なくないと考えられています。

実際に臨床現場でも入浴前後に「突然の激しい頭痛」「片側の手足の脱力」「ろれつ障害」「一過性の意識消失」などを呈し、脳卒中や脳循環障害が疑われるケースを数多く経験します。

 

「ヒートショック」と血圧変動のメカニズム

いわゆるヒートショックとは、急激な温度変化により血圧が大きく上下する現象を指します。

1. 寒い脱衣所・浴室では

暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動すると、体は熱を逃がさないように血管を収縮させます。
その結果、血圧が急上昇します。 このとき、動脈硬化が進んだ血管では圧力に耐えきれず脳出血くも膜下出血の引き金となる可能性があります。

2. 熱い浴槽では

一方、熱い湯に急に浸かると血管が拡張し、血圧が急低下します。
血圧低下が著しい場合、脳への血流が不足し、立ちくらみ・失神・意識障害を起こして浴槽内事故(溺水)につながることがあります。

 

脳神経外科医が勧める「脳を守る入浴習慣」4つ

以下は、消費者庁の注意喚起に基づく、医学的に妥当な予防策です。

① 脱衣所と浴室の温度差をなくす

  • 脱衣所に小型の暖房器具を設置する
  • 給湯時にシャワーを使い、蒸気で浴室を事前に暖める
  • 高齢者は「一番風呂」を避ける(または家族が入った後にする)

温度差を減らすことが、血管を守る最も重要な対策です。

 

② お湯の温度は41℃以下、入浴は10分以内

消費者庁は、「湯温41℃以下、入浴時間10分以内」を推奨しています。 熱すぎる湯や長時間の入浴は、激しい血圧変動やのぼせ、転倒のリスクを高めます。

 

③ かけ湯は手足から、ゆっくりと

いきなり肩まで浸かるのは避けましょう。心臓から遠い手足から十分な「かけ湯」を行い、体を徐々にお湯の温度に慣らしてください。

 

④ 入浴前後の水分補給

入浴中は発汗により、知らず知らずのうちに脱水状態になります。脱水は血液をドロドロにし、循環を悪化させます。 入浴前と入浴後に、それぞれコップ1杯の水分補給を心がけてください。

 

こんな症状があれば、すぐに受診・救急要請を

入浴中または入浴後に、次の症状が出た場合は要注意です。

  • 突然の激しい頭痛(ハンマーで殴られたような痛み)
  • 一過性でも意識を失った
  • 片側の手足がしびれる、力が入らない
  • ろれつが回らない、言葉が出にくい

これらは脳卒中の初期症状である可能性があります。「ただの湯あたりだろう」と自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。症状が強い場合は、ためらわず119番通報を行ってください。

 

脳ドックという選択肢

高血圧や生活習慣病をお持ちの方、ご家族に脳卒中歴がある方には、症状がないうちの「脳ドック」も有用です。
MRI・MRA検査により、症状が出る前の「無症候性脳梗塞」や「未破裂脳動脈瘤」などを早期に発見できる場合があります。

 

まとめ

冬の入浴は心身を温める一方で、脳や心臓にとっては負担となる環境にもなり得ます。

  1. 脱衣所・浴室を暖める
  2. 湯温は41℃以下、10分以内
  3. 入浴前後の水分補給

この基本を守ることが、命を守る第一歩です。
ご自身だけでなく、ご高齢のご家族にもぜひ共有してあげてください。

 

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参考文献(一次情報)

・消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故にご注意ください

・政府広報オンライン「冬場に多い高齢者の入浴中の事故に注意