片頭痛の新薬「ナルティーク」登場 予防と治療を1錠で?効果・費用・エビデンスを脳神経外科医が解説
片頭痛の新薬「ナルティーク」登場
予防と治療を1錠で?効果・費用・エビデンスを脳神経外科医が解説

「頭痛が起きたら薬を飲むけれど、最近効きが悪い」
「予防薬を毎日飲むのは大変だし、注射は怖い」
そんな片頭痛のお悩みを持つ方に、2025年、新しい選択肢が加わりました。 「ナルティークOD錠(一般名:リメゲパント)」です。
これまで別々だった「発作時の治療」と「予防」の両方に使える日本初の飲み薬として承認されたこの薬剤、
本記事では、脳神経外科の視点から、ナルティークの画期的な特徴、3割負担での費用、そして最新のエビデンス(臨床試験データ)についてわかりやすく解説します。
1. 新しい片頭痛薬「ナルティーク」の3つの特徴
ナルティーク(リメゲパント)は、従来の薬とは異なるメカニズムを持つ「ゲパント系」と呼ばれる新しいタイプの薬剤です。
① 「急性期治療」と「予防」の二刀流
これまでは、「痛い時に飲む薬(トリプタンなど)」と「予防薬」は別のものを使うのが常識でした。 ナルティークは、服用方法を変えることで両方の役割を果たします。
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発作時(急性期治療): 頭痛が起きたときに1回1錠服用
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予防(発症抑制): 1日おき(隔日)に1錠服用
② 血管への影響が少なく、使いやすい
従来の特効薬「トリプタン製剤」は血管を収縮させる作用があるため、脳卒中や心臓病のリスクがある方には使用が制限されることがありました。
しかし、ナルティークは血管収縮作用がほとんどありません。従ってこれまで持病で薬を諦めていた方にも使用できる可能性があります。
③ 水なしで飲めるOD錠
口の中で溶ける「口腔内崩壊錠(OD錠)」です。会議中や外出先など、水がすぐに手に入らない状況でもサッと服用できます。
2. ナルティークの薬価と費用(3割負担の目安)
新薬であるため、既存のジェネリック医薬品等と比較すると費用は高めです。ライフスタイルや経済的なバランスを考えて選択することが大切です。
【薬価】 1錠(75mg):2,923.20円 (※2025年11月時点)
【患者さんの窓口負担(3割負担)の目安】
| 使用目的 | 服用頻度 | 費用目安(薬剤費のみ) |
| 発作時(頓服) | 発作時に1錠 | 1錠あたり 約 880円 |
| 予防で使用 | 隔日投与(月15錠程度) | 1ヶ月あたり 約 13,150円 |
※上記は薬剤費のみです。別途、診察料・処方箋料・調剤料などがかかります。
※予防使用の月額は、抗CGRP抗体注射薬(エムガルティ等)の費用(3割負担で約12,000円〜)と比較的近い価格帯です。
3. エビデンス(臨床試験の結果)
ナルティークの効果は、国内外の厳格な臨床試験で確認されています。
ここでは「発作時に飲んだ場合」と「予防で使い続けた場合」の具体的なデータをご紹介します。
① 発作治療の効果 ― 服用して2時間後、何が起きるのか? ―
日本・韓国の患者さんを対象とした急性期試験(Study 313)では、「服用2時間後の状態」を主要な評価項目として調べました。
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痛みが“完全に消える”患者さんが有意に多い ナルティークを服用した患者さんでは、2時間後に痛みが完全に消失した(Pain freedom)割合が、プラセボ(偽薬)より有意に高い結果でした。
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「最もつらい症状」も同時に改善 片頭痛では、吐き気・光過敏・音過敏など「痛み以外のつらさ」を伴うことが多くあります。 試験では、これらの中から患者さんが最もつらい症状(MBS)と感じるものについても評価され、2時間後の消失率がプラセボより有意に高いことが示されました。
Kim B-K, et al. Cephalalgia. 2024;44(1_suppl).
② 予防の効果― 1日おき(隔日)に飲み続けるとどう変わる? ―
予防目的の効果は、国際的な第2/3相試験で検証されています。
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月間片頭痛日数(MMD)が確実に減少 隔日で服用した患者さんでは、9〜12週の時点で月間片頭痛日数がプラセボより有意に減少。軽い効果ではなく、統計学的に明確な差が示されました。
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約2人に1人の「頭痛が半分以下」に 特に注目されるのが「50%奏功率」(頭痛日数が50%以上減った割合)です。 国際試験(Lancet 2021)では、ナルティーク群の約49%(ほぼ2人に1人)が片頭痛日数を「半分以下」に減らすことに成功しました。
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効果は早い段階からあらわれる 多くの患者さんで服用開始1週目から頭痛日数が減り始め、継続することで安定する傾向が示されています。
Croop R, et al. Lancet. 2021;397:51-60. PMID: 33509386 Johnston K, et al. Headache. 2024. PMID: 38227260
4. 使用する前の注意点
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対象となる方: 片頭痛と確定診断された方が対象です。今までにない激しい頭痛や、発熱を伴う場合は、まずMRI等の検査が必要です。
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飲み合わせ: 特定の薬(CYP3A4阻害薬など)との併用には注意が必要です。お薬手帳を必ずお持ちください。
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効果の判定: 予防で使用する場合、効果の実感まで時間がかかることもあります。開始後3ヶ月を目安に継続を判断します。
5. 院長からのメッセージ
ナルティークの登場により、「注射は苦手」「持病でトリプタンが飲めない」といった理由で治療を諦めていた患者さんにも、新しい選択肢を提案できるようになりました。片頭痛は我慢するだけの病気ではありません。 「自分の頭痛にナルティークは使えるの?」「費用について相談したい」など、少しでも気になる方はお気軽にご相談ください。当院では患者さんのライフスタイルに合わせた最適な治療法を一緒に考えます。
参考文献
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薬剤情報(添付文書) ナルティークOD錠75mg 添付文書 / インタビューフォーム(2025年11月改訂)
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急性期治療の有効性(日本・韓国 第3相試験 Study 313) Kim B-K, et al. Efficacy and safety of rimegepant for the acute treatment of migraine among adults in Japan and South Korea. Cephalalgia. 2024;44(1_suppl).
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予防療法の有効性(国際共同 第2/3相試験) Croop R, et al. Oral rimegepant for preventive treatment of migraine: a phase 2/3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2021;397(10268):51–60. [PMID: 33509386]
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長期安全性・忍容性 Johnston K, et al. Long-term safety and tolerability of rimegepant 75 mg for the preventive treatment of migraine. Headache. 2024;64(2):198-210. [PMID: 38227260]
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